最高の並べ方を見つけよう!! こちらは“PPD”『パーフェクト・パングラム・デスク』です。

投稿作品

各投稿作品の著作権は、各作者にあります。本サイトは、投稿者の許諾(当サイトへの投稿)のもとにこれを掲載しております。

東京都町田市 山下達也さんの作品(2003年9月12日掲載)

二等賞



「ひねも」

ひねもす 世論に立て
振り向けばそこ
苗木らを抜く 魔、闇夜、炎、血 ・・・
掴めるさ 平和と自由あれ

ひねもすせろんにたて
ふりむけばそこなえぎ
らをぬくまやみよほの
おちつかめるさへいわ
とじゆうあれ


【寸評】山下さんが初めてのパングラミングに挑戦してくれました。
まだ14歳とのことですが、大人の作品に決してひけをとらない、とてもしっかりとした作品になっていると思います。特に、全体の文脈にさほど無理がなく、ほぼ通っているとみていいでしょうね。
文意も作者の説明は不要でしょう。「苗木」という、エコロジカルなキーワードに対し、自然破壊の象徴としての「魔」「闇夜」「炎」「血」という不気味な単語が並んでいて、それらが苗木を「抜く」様を見つめる目が光ります。現代的な主題ですね。
詠み手の理念も、利己主義を否定し「世論」とともに「平和と自由」を掴もうとしていて、未来を生きる少年らしい健全な精神が表現されています。
山下さん、良い作品をありがとうございました。そしてこれからも、更に傑作ができるよう、パングラムを是非続けてみてください。

パーフェクト・パングラム・デスクでは、1996年の開設以来、皆様方からのご投稿を募集してまいりましたが、2003年8月末をもちまして、いったん募集を打ち切らせていただきました。
山下さんのこの二等賞作品がこれまでで最後の投稿作品となります。
また状況が許すようになりましたら、投稿募集を再開させていただくこともあるかもしれません。
皆様、本当にどうもありがとうございました。



大阪府大阪市 (飛鳥仁頼改め)泉蒼来さんの作品(2003年3月12日掲載)

佳作



「やどり」

やどりぎ探して
旅へ行こうよ
みんな集まれ
雲分け散らそー
絵を盗むボロの船に
馳せる夢

やどりぎさがしてたび
へいこうよみんなあつ
まれくもわけちらそお
えをぬすむぼろのふね
にはせるゆめ


同じく 泉蒼来さんの作品(2003年3月12日掲載)

佳作



「うたを」

歌を忘れ 楽園で眠るカナリア
夜更けも来ぬ地に行き
夢覚まし 帆下ろせ
部屋の外は 日満つ

うたをわすれらくえん
でねむるかなりあよふ
けもこぬちにいきゆめ
さましほおろせへやの
そとはひみつ


同じく 泉蒼来さんの作品(2003年3月12日掲載)

佳作



「あおく」

青く濡れた露空に 環を描き闇降り
合歓の花へ 人打ち寄せる
星転げ 今も天目指す

あおくぬれたつゆぞら
にわをえがきやみふり
ねむのはなへひとうち
よせるほしころげいま
もてんめざす


【寸評】今回から泉蒼来さんとハンドルネームを変えてのご投稿です。
「やどり」から拝見しましょう。4行目まで、とても良かったと思います。宿り木を探して旅に出る、なんて、なるほどなあと、新鮮な思いがしました。しかし5、6行目「絵を盗むボロの船に馳せる夢」、う〜ん、考えれば考えるほど謎の闇に包まれていくぅ〜という感じでした。
次に「うたを」ですが、これも全体の文脈が「深すぎる」、ということは、謎になってしまうんです。はじめに、頭の中で文脈が通っているという前提に立って、現れる事象と事象の関連、つじつまを、想像力逞しくしてよいしょとばかりに整合させてしまうという、尋常でないパワーを必要とします。
三つ目の「あおく」、これも「青く濡れた露空」はきれいだったんですが、あとが謎になっています。
前回がなかなか味わい深かったり、難易度の高いものに挑戦してくださっただけに、今回は辛いものがあったかとも思いますが、それも含めてパングラムの面白さなんですよね♪ 私もこのような謎だらけの「作品」を量産してきております。(公開する勇気はありませんが =_=;)
今回も気付いたのですが、泉蒼来さんがお寄せ下さった三首の中には、私も使ったことのある単語がかなりたくさん入っています。
「宿」「旅」「分け散らす)」「絵」「盗む」「ボロ」「船」「馳せる」「夢」「歌」「忘れ」「楽園」「眠る」「夜更け」「来ぬ」「地」「覚ま(す)」「帆」・・・・・と、見ていくと、ほとんどの単語を私も使ったことがあります。
改めて考えてしまうのですが、パングラムって、使う単語が自然と限られて来るという面があるものなんですよね。もちろん、「父」「母」「心」「トマト」など、絶対に使えない単語も山ほどあって、「パグラムに心なし!」なんて言ってしまうと、まるで空虚でしかないもののように思われそうでつらいのですが、でもでも、そこから如何にして面白い単語、新鮮な組み合わせを見つけてくるかが、作品の出来映えに大きく関係しているように思います。
「やどりぎ探して旅へ行こーよ」「「歌を忘れ楽園で眠るカナリア」「青く濡れた露空に」・・・このような、普通の文芸ではなかなか出てきそうにない新鮮な言葉、新鮮な表現に満ちあふれたものが、パングラムだからこそ、出てくるチャンスがあるんじゃないかと思うわけです。



大阪府大阪市 飛鳥仁頼さんの作品(2002年12月20日掲載)

佳作



「はなや」

花や紅葉空に舞う
鳥達これで草結わえん
風よ眠る頬を吹け
月の色明日へ秘めぬ

はなやもみじそらにま
うとりたちこれでくさ
ゆわえんかぜよねむる
ほおをふけつきのいろ
あすへひめぬ


同じく 飛鳥仁頼さんの作品(2002年12月20日掲載)

佳作



「ゆきの」 (7字改行隠し言葉:「ゆめいろはうた」)

雪の夜すぐ雨と変わりて
不意に止む
空転げ星も寝る
華を見れぬ悲運背負え

去った街へ

ゆきのよすぐあ
めとかわりてふ
いにやむそらこ
ろげほしもねる
はなをみれぬひ
うんせおえさつ
たまちへ


【寸評】いただいてから、こちらへ掲載するのに、今回は時間がかかってしまいました。
始めに、飛鳥仁頼さんには深くお詫び申し上げます。m(_ _)m本当にすみませんでした。
作品を拝見しましょう。先に、下の「ゆきの」の方をご覧いただきましょうか。
「ゆめいろはうた」の7字が、7字改行の各行頭に出てくるように作られています。PPD作例集にも掲載しております「ゆやけ」の作品を飛鳥仁頼さんがご覧になり、同じようなものをと挑戦してくださったんですね。
“隠し言葉”として、きっちり完成しているだけでなく、パングラム作品としても、なかなかの高レベルだと思います。特に、漢字かな混じり文の、第一行から第三行まで、「雪の夜すぐ雨と変わりて/不意に止む/空転げ星も寝る」、この部分の文脈は本当にお見事でした。続く二行も、決して“謎”とは言い切れませんで、心情の描写と、場面の展開、とでも考えたらいいでしょうか、そのように見れば、全体の文脈も、一応何とかつながります。
二等賞以上にするのにあと一歩と見させていただいたのは、その二行のつながりが、すっきりとしたものとは見えなかったためですが、それでも、これだけの制約を乗り越えたのですから、すごいものだと思います。
このような“隠し言葉”も、ちょっと根気を入れてやれば決してできないことではないんですね。パズル性に興味をお持ちの皆さんは、是非挑戦してみてください。
次に、上の作品「はなや」を拝見しましょう。
とてもきれいな、平易な言葉で作られています。その点、とても感じのいい作品になっていると思います。これもほとんど入賞とさせていただきたいレベルだと思うのですが、筆者が最後にひっかかったのは、「月の色明日へ秘めぬ」の行です。「秘めぬ」が、「何を?」なのか、それが入っているか、あるいは入っていないならいないなりに、わかるようにできていたら文句なしだったと思います。
飛鳥仁頼さん、初めての作品だということでしたが、ムードがすごく良かったです。是非またお送り下さい。



大阪府堺市 skrさんの作品(2002年11月18日掲載)

佳作



「わすれ」

忘れ得ぬ
しのぶ想いを
往きてたち
咲く花ほろり
浮かべこそ
乱麻秘め
後に見つけよ
背や眠る

わすれえぬしのぶおも
いをゆきてたちさくは
なほろりうかべこそら
んまひめあとにみつけ
よせやねむる


同じく skrさんの作品(2002年11月18日掲載)

佳作



「たんざ」

短冊は
文する月に
川面揺れ
逢瀬や千代と
編む姫へ
空を越え
星の間 抜けて
音色鳴り

たんざくはふみするつ きにかわもゆれおうせ やちよとあむひめへそ らをこえほしのまぬけ てねいろなり


【寸評】「わすれ」「たんざ」ともに、前作「むねに」同様、七五調を貫き、また美しい言葉でまとめようという意志が感じられる点、とても好感の持てる作品です。それはとりもなおさず、可能な限り自分の求める形・色合いにしようという意志の現れであると思われるからです。
ただきっと、作者のskrさんご自身も自覚されていると思いますが、これで満足はされていないのではないかと思います。以下、選者の想像を申し上げますと、初めに単語が現れてきて、それぞれの単語の脈絡にはさほど気を留めず、ただ一つ一つの言葉の魅力的であることをまずしっかりと肯定する、しかしその「肯定」は、必ずしも作品全体の統一感にとって、良い方向に働くとは限りませんから、実はすでに組んである単語の一つ一つを再考・分解する余地がある、あるんだけれども、作者のskrさんにとって、一つ一つの語義は、言葉の色合いほどには重要ではないのではないでしょうか。わかりやすさを決めるのは語義と語義との関係、つまり意味としての文脈ですが、skrさんのパングラミングでは、語義よりも色合い、つまりニュアンスや語感が大切にされていて、それがある程度満たされれば取りあえず良しとする、というような満足が行われているのではないか、私は自分の経験に基づいた判断をしておりますが、そのように感じられました。
PPDの評価基準は、いつも申し上げている通り「パングラムらしくないこと」です。「パングラムらしい」作品は評価が落ち、「パングラムらしくない」作品は評価が高くなります。
実はこの評価基準にも問題がありまして、何かといえば、「とても良いムードをもった作品」、あるいは「文学的な格調を感じさせる作品」といった条件は、二の次になることです。PPDで「二の次」にしている条件を、skrさんの作品はとてもよく満たしています。
「ああ、いい感じだよねえ、こういうの。なんか読んでるとうっとりしてくるよねえ!」 skrさんの作品はまさにそういう感じ、つまり読んでうっとりする美しさがあります。 でも実は、こういう作品を好んで作られる方が、いざ「語義」「文脈」を満たしてくると恐ろしいことになります。今風にいえば「やばく」なります。(とても良い意味です。)え?どこがパングラム??? というような、完全な文学作品が出てくる可能性が極めて高いのです。私はそう見ております。
そういうわけで、まだまだ説明されないとわからない部分が、二首ともにあったために、入選とはなりませんでしたが、どうぞもう一歩、突っ込んでみてください。組上がった単語の一つ一つへの執着を捨てて、文脈重視で取り組まれれば、きっとすごい傑作ができるでしょう。



鳥取県米子市 久遠サッサさんの作品(2002年11月18日掲載)

二等賞



「こゆき」

小雪踊る 夜更け 眠れず 浜辺を散歩
てのひらに繋いだ温もりが めちゃ幸せ 笑み揃う

こゆきおどるよふけね
むれずはまべをさんぽ
てのひらにつないだぬ
くもりがめちゃしあわ
せえみそろう


同じく 久遠サッサさんの作品(2002年11月18日掲載)

参考作品



「きみど」

黄緑の草花を 茜色に塗る空も
結婚した 火照む俺や嫁へ 夕陽待ち伏せえすわ

きみどりのくさばなを
あかねいろにぬるそら
もけっこんしたほてむ
おれやよめへゆうひま
ちぶせえすわ

     き
     みどりの
 くさばなを
     あかね
     いろにぬるそらも
 けっこんした
    ほてむおれやよめへ
  ゆうひまちぶせえ
     すわ


同じく 久遠サッサさんの作品(2002年11月18日掲載)

佳作



「ゆうひ」

夕陽に染まる 地平線 見渡す限り 砂漠の世 「む!毛!増えろ」 アホな親父め 猫を連れて戻らぬ

ゆうひにそまるちへい
せんみわたすかぎりさ
ばくのよむけふえろあ
ほなおやじめねこをつ
れてもどらぬ


同じく 久遠サッサさんの作品(2002年11月18日掲載)

参考作品



「すてね」

捨て猫 マリンブルーの空を見上げ
おっきな夢は無知だよと 木星へ帰れぬ 侘びしさ ほろニヤ すてねこまりんぶるう のそらをみあげおっき なゆめはむちだよとも くせいへかえれぬわび しさほろにや


【寸評】久遠サッサさん、初投稿で四首(!)もいただきました。ありがとうございます。
「こゆき」は見事に文脈が通りました。読んでいる方も笑みがこぼれてくるような、幸せな作品になっていると思います。特に、「小雪踊る夜更け」「浜辺を散歩」「温もり」といったポイントとなる言葉がとても生き生きとしていますね。夜更けの浜辺って、きっと真っ暗闇で怖いだろうなあ、なんて想像してしまいましたが、そうしたマイナス方向に向かう連想も、「めちゃ幸せ」「笑み」という言葉で救われてしまうという、なんともうまいまとまりを見せています。
次の「きみど」は、参考作品とさせていただきました。特に問題は「火照む」と、最後の「えすわ」でしょう。これは文脈上の不可解(つまり「謎」)をも飛び越えてしまって、通じないものになってしまっていますので、ルールにもちょっとひっかかってきます。
それから、ご紹介したように、縦に「きみをあいしてます」という言葉が隠されているということですが、これは苦しいですね。
「隠し言葉」の場合は、同じ文字数毎に改行したとき、行頭あるいは行末の文字を並べて意味が通ること、あるいは斜めにまっすぐでもいいでしょう。いずれにしても、どの位置の文字をつなげて読むかというルールがはっきりわからないとなりません。
もう一つ「折り込み」というのがありますが、これは文の切れ目に従って改行して、行頭の文字が言葉になっているものですね。
「隠し言葉」も「折り込み」も、不規則に好きなところで改行することはできませんので、「きみど」の作品の場合はそのどちらにも該当しないということになります。
次の「ゆうひ」を拝見しましょう。「夕日に染まる」「見渡す限り」の「砂漠の世」の「地平線」で、「アホな親父」が「猫を連れて」、「毛、増えろ!」と叫んで「戻らぬ」という、この壮大なスケールと個人的悩みのコントラストがものすごい作品です。いやあ、こういうことが起こるのもパングラムなんですねえ!ほんとに楽しませていただきました。
最後の「すてね」はどうでしょうか。こちらもスケールが大きくて、「木星へ帰れぬ」「捨て猫」が登場します、が、最後の「ほろニャ」でしょうか・・・これは、気持ちはすごぉーっく、よくわかるんですが、これもやはり、色合い通じて意味・・・通じきらない、というところでしょうか。PPDのパングラム審査基準さえなければ、これも高く評価したい作品なんですが・・・申し訳ありません。m(_ _)m



名古屋市 榎本初さんの作品(2002年10月23日掲載)

二等賞



「もやへ」

靄へ射す淡い日を
見つけ 頬笑んで
真白の濡れた雌花に
空 被せる時
眠りゆく胡蝶

もやへさすあわいひを
みつけほおえんでまし
ろのぬれためばなにそ
らかぶせるときねむり
ゆくこちょう




【寸評】榎本初さん、初めてのご投稿をいただきました。じっくり拝見して、じわぁ〜っと感動しました。ほんとに、じっくり、じ〜っくり読ませていただいて、じわっ、じわっ、じわぁ〜〜っとです。私には、この「もやへ」の世界、わかります。光景が、浮かんできます。やや、抽象的かもしれませんが、「眠りゆく胡蝶」の最期、でしょうか、靄に包まれて、最後の花に寄り添うようにして、最後の時を迎えるという感じでしょうか、これは読者に判断の委ねられるところでしょうけれども、白一色の、乳白色の、淡い淡い光景が浮かんできます。
じゃあ「一等賞」にしたらいいんじゃないか、とも思われそうで怖いのですが、「一等賞」ほどにはっきりしない世界でもあって、そこがまたこの作品のいいところなのではないかと思ったりします。「一等賞」ではない理由を挙げるとすれば、漢字混じりの四行め、「空 被せる時」でしょうか。ここできっと多くの読者が、理解に苦しむのではないかと思われました。「被せる」とともに、「見つけ」「頬笑んで」の主体が「胡蝶」である(と私は理解しましたが)のか、あるいは他の何か、あるいは作者自身であるのか、このあたりも、判断が割れる可能性を感じた次第です。でも決して「謎」ではないと思います。本当に微妙なところだと思います。
榎本初さん、是非またお送り下さい。楽しみにしております。



岐阜県穂積町 いもぶぶさんの作品(2002年10月23日掲載)

二等賞



「やけに」

やけに浅む気持ち
僕は笑ったふり
ウソまみれの白い砂を捏ね、
指で笑顔へセメント塗るよ

やけにあさむきもちぼ
くはわらったふりうそ
まみれのしろいすなを
こねゆびでえかおへせ
めんとぬるよ


同じく、いもぶぶさんの作品(2002年10月23日掲載)

佳作



「すしな」

「寿司並盛り、ワサビ抜きでね」
中トロを漬け込むのか。やられた、褒めるぜ!
酔えば、満腹に。
お愛想へ。

すしなみもりわさびぬ
きでねちゅうとろをつ
けこむのかやられたほ
めるぜよえばまんぷく
におあいそへ


【寸評】今年四月に、とても楽しい作品をご投稿いただいた、いもぶぶさんの第二回のご投稿、今度は二首お送りいただきました。
今度もやっぱり、読んでたっぷり楽しませていただける作品になっていると思います。仮名葉の勝手でしょ?みたいなところが面白さでもあるパングラムですが、こうして一人の作者の作品を複数拝見すると、やはり作者のお人柄、あるいは、パングラマーとしての性格(?)のようなものが出るんだなあと、感じ入る次第です。
まず「やけに」ですが、後半の二行、「ウソまみれの白い砂を捏ね、指で笑顔へセメント塗るよ」が切れ味があって最高ですね。この二行は、その前の「僕は笑ったふり」から、ちょっとシュールながらも文脈が通った感じがしますので、全部で三行、46枚のうちの37枚までが、見事に文脈が通っています。問題は最初の行、「やけに浅む気持ち」、これなんですが、ニュアンスはわかるんですが、本当にわかるかと、もし念を押されたら、わかった気になっていても実はわかってないのではないかと、ちょっと自信がなくなります。「やけに〜の気持ち」ということでは文句ないと思いますが、それと「浅む」とのつながりでしょうか。「浅む」という語自体にも、今ひとつ馴染みがない(用例を見かけることが極めて少ない)のは、不利な方向に作用しているかもしれません。
このあたりがびしっと通れば、これはもう「一等賞」レベルとなるのではないでしょうか。実はこの部分に筆者は大いに苦しみまして、一旦は「二等賞」ではなく「佳作」とさせていただいてアップしたのですが、一晩経って再度拝見し、「二等賞」はやはり差し上げるべきだという結論に達しました。
とにかく、できる限り客観的に、絶対的な評価をするように心掛ける、という義務が選者にはあると思うのですが、個人的には、この「やけに」は非常に、好きです。
次の、「すしな」を拝見しましょう。
「寿司」「並盛り」「ワサビ」「中トロ」「漬け込む」「満腹」「お愛想」、この7語(26枚)が、寿司屋という場面をしっかりと設定していますね。パングラミングの経験があれば、これだけ揃えるのが容易でないことはわかります。ですから、ここまで来たらあとは詰めの段階になるんですね。さて、その“詰め”(詰め将棋の詰め)はどうなったでしょう。
まず全体の印象を整えることが必要かと思います。はじめの行に「 」が使われて台詞という設定になっているんですが、次の行の「やられた、褒めるぜ!」という、さらに台詞的な台詞には「 」がつけられていません。このあたりは仮名葉の都合ではなく、作者の意図そのものであるわけですが、ちょっとこれは、損をしているのではないでしょうか。
わかりやすい方向に仮名葉が集まりながら、それをわかりにくい方向へと振ってしまったような印象なのです。この印象が、私の個人的、主観的な印象なら仕方ありませんが、恐らくこれは、いもぶぶさんの茶目っ気によるものだと思います。だからこそ、楽しい作品になっていて、読ませていただく側としましては、本当にありがとうございましたと感謝したいものです。ですが、作品の質的評価を上げるためにはちょっと、損だなあと、そういう感想を持ちました。それが“パングラムらしさ”になってしまったという感が否めません。
やたらと冷静なことを書かせていただきましたが、正直、感心するところもたくさんあって、二首とも「理屈抜きに楽しい!」、そんな作品でした。



大阪府堺市 skrさんの作品(2002年9月20日掲載)

佳作



「むねに」

胸に咲く
恋煩えて
花や誰そ
夢幻の
季節へと
降りかける
悲恋を満ちぬ
青模様

むねにさくこいわずら
えてはなやたそゆめま
ぼろしのきせつへとふ
りかけるひれんをみち
ぬあおもよう




【寸評】堺市のskrさん、初のご投稿です。ありがとうございました。m(_ _)m
さてまず、ご質問をいただいておりますので、お答えしたいと思います。
「『誰そ』や『満ちぬ』など古い言葉使いが混じっているのですが、これはルールを守れているのでしょうか?」
これ、私も以前、疑問に思ったことがあるんですよ。古文調の文体で行くのなら、仮名も歴史的仮名遣いにした方がしっくり来る。でもそこを46字の現代仮名遣いで作ってしまう。なんか違和感あるなあ…と。
でも、日本語は日本語、仮名遣いは仮名遣いと、それぞれに考えたらいいのではないでしょうか。異論もあると思いますが、古文調でも現代仮名で行きましょう。
因みに、「PPD作例集」にも載せております拙作「ゆやけ」ですが、これは古文調で現代仮名ですが、大修館書店の『言語』でも掲載していただくことができました。かの大修館さんでもオッケーなんですから、オッケーですよ。Y(^-^)

では、「むねに」を拝見します。
ご自身仰るように「五七五七五、五七五」の形式で作ってくださいました。これがどうやら一番しっくりくるんですね、46音の七五調では。全体、とても美しい感じでまとまっていると思いました。きれいな言葉でまとめようという意志を可能な限り貫こうとされた、その点で大変に好感が持てます。
「こんなふうになっちゃった」という作品よりもやはり、「なんとかここまで来た」という、作者の苦心の感じられる作品を評価したいものです。skrさんご自身も「成就するも失恋するも含めての恋を表現してみたかった」と仰っています。
さて、作品のレベルを考えてみたいと思います。
とてもきれいな感じなんですが、まず、つらいかなと思ったのは、文意がすんなりと頭に入ってこなかったところです。どこかに無理な語の組み合わせがあるということになりそうですね。
「胸に咲く」のが「恋」なのか「花」なのか、このあたりでしょうか。最後の「悲恋を満ちぬ青模様」というのも、きっと作者にはわかっているんでしょうけど、読み手のみんなに同等の理解が得られるかと考えますと、つらいでしょうね。かなり「謎」になってきます。
そんなわけで、入賞にはできませんでしたが、ナイストライ!だったと思いますよ。どうぞまた送って下さい。




千葉県流山市 Waverさんの作品(2002年9月20日掲載)

佳作



「このよ」

此の世に聳える摩天楼
明日へ吹く風 闇張り裂け
眠れぬ月と 星たちも
終わらない夢を

このよにそびえるまて
んろうあすへふくかぜ
やみはりさけねむれぬ
つきとほしたちもおわ
らないゆめを




【寸評】Waverさんも初めてご投稿下さいました。中学三年生だそうで、最年少記録ではありませんが、史上二位ぐらいでしょう。よく送ってくださいました。ありがとうございます。
まず素晴らしいのは、使われている言葉がとても平易な、わかりやすい言葉ばかりだということですね。「わかりやすい。」、パングラムではまずそこを評価するべきだろうと思っております。
そしてその「わかりやすさ」には、遣われている言葉の平易さ、文脈の自然さの二つがあると思います。Waverさんのこの「このよ」では、特に前者の、単語の平易さが光っていますね。
あとは、文脈がすっと通れば、これはもう入賞間違いなしとさせていただきます。さあ文脈はどうでしょうか。う〜ん、なんだか、見れば見るほどに、こうしたらどうだろう?という気持ちになってきます。「を」はここがベストだったのかな?「眠れぬ月と星たち」と「終わらない夢」との関係は、もうこれ以上変えられないのかな・・・・?考えれば考えるほど、楽しませていただくことができますね。Waverさん、是非もっと、楽しんでみてください。きっと最高の並べ方が見つかると思いますよ♪




愛媛県松山市 ことぶきさんの作品(2002年9月20日掲載)

二等賞



「けむる」

けむる靄の路
薄い空眺め
おまえさんは
ぽろりとギターを弾くわ
夜露に濡れて伏せし猫へ

けむるもやのみちうす
いそらながめおまえさ
んはぽろりとぎたあを
ひくわよつゆにぬれて
ふせしねこへ


【寸評】今年7月に二首ご投稿くださった ことぶきさんの、二度目のご投稿になります。
前回の「いしの」「ほしい」と続く「けむる」ということになるわけですが、やっぱり作者のお人柄が出るんですね。何も決して仮名葉が勝手に作品をでっち上げるわけではないということが、よおくわかる!という印象を持ちました。
では、ことぶきさんって、どんな人?説明して!と言われると言葉に窮します。言葉では言い表せない、でも、心がちゃんと掴んでいるんですね。作者のお人柄というものを。
今回の「けむる」はとにかく、その光景がくっきりはっきりと、目に浮かんできます。そして、遣われている言葉にも無理がない。さらに、独特の文学的、詩的なムードがある!!ということで、二等賞とさせていただきました。
多くを語る必要もないでしょう。ご覧の皆さんもどうぞご鑑賞下さい。




広島県東広島市 Jokerさんの作品(2002年9月20日掲載)

佳作



「にしの」

西の小鳥はうそつくわ 親を呼んでね
ちびな娘さ
まだ見ぬ世界へ行け
帰路も ほら ふれあえる

にしのことりはうそつ
くわおやをよんでねち
びなむすめさまだみぬ
せかいへいけきろもほ
らふれあえる


同じく、Jokerさんの作品(2002年9月20日掲載)

佳作



「まつち」

マッチ減り 燃える炎
火傷しそうな
雪に愛された娘は
食わぬが 喜び
「ランプを見せてね」

まつちへりもえるほの
おやけどしそうなゆき
にあいされたむすめは
くわぬがよろこびらん
ぷをみせてね


【寸評】東広島市のJokerさんから、昨年の四月以来、久々のご投稿をいただきました。ありがとうございます。前回、「広島市」としてしまいまして、すみませんでした。訂正してお詫びします。
前回は三首、今回も二首ご投稿いただきました。ありがとうございます。
さて、「にしの」と「まつち」ですが、Jokerさんご自身も仰るように「久々に遊んでみました。」・・・まさにそんな感じですね。楽しかった!
そういう楽しみ方ができるのがパングラムのいいところですよね。文学的に格調高くやってみたいというところを追求するも良し、肩の力を抜ききってパズルとして遊ぶもまた良し。もちろん、その中間というのもあるでしょう。「良きかな、良きかな!」(『千と千尋の神隠し』より)ってところでしょうか。(^^)
ということで、Jokerさんの作品は、まさに肩の力が抜けています。パングラムであることがすぐにわかるわけですが、それもまた良し!だと思いますよ。
また是非!遊んでみてください。




富山県西砺波郡福岡町 Cypressさんの作品(2002年8月19日掲載)

佳作



「とわを」

永久を眠り
燃える銀河へゆく獅子は
朱の星降らせ
闇さまよい
小砂に虚ろ潜めて立ちぬ

とわをねむりもえるぎ
んがへゆくれおはあけ
のほしふらせやみさま
よいこずなにうつろひ
そめてたちぬ


佳作


「あすほ」

明日
法、念は腐れ
無へ下りる
行け兵よ
刀抜き身血に染めて舞え
矢降らし人を射殺せ

あすほうねんはくされ
むへおりるゆけつわも
のよかたなぬきみちに
そめてまえやふらしひ
とをいころせ




【寸評】Cypressさんが二首、ご投稿下さいました。パングラム独特の、不思議な世界が展開しています。
今回はまず、拙著『夢・色・葉・歌』から一文を引用します。
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パングラミングに集中していると一種の「境地」に入ってゆくことがあります。「以呂波(いろは歌)」が『大般涅槃経(だいはつねはんぎょう)』という仏教典の一節だと解釈されているのも、パングラミングという作業に日常から遊離する感覚を呼び起こす作用があって「悟りの境地」みたいな内容のものに傾きやすいためだと言えそうな気がします。もちろん初めからそれを狙ってパングラムを作ることも可能です。
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つまりパングラミングには、人智を超えた世界が展開しやすいんですね。
「伊呂波」も、その不思議な言葉の世界に魅了された日本人は数知れず・・・。でもなぜそんな不思議な言葉の世界が生まれたのかを考えるときに、誤ってはいけないのは、作者が神様みたいな人だったからだと勘違いすることですね。そんなことは決してないのです。人間は人間、神様ではありません。それはパングラムがそもそも、そういう不思議な世界になりやすいものだからですね。これはパングラミングをご経験された皆様、誰もがご存じのことでしょう。
というわけで、Cypressさんの作品を拝見しましょう。
まず「とわを」。・・・・・!。おおっ!!!「獅子」だぁ〜!パングラムには絶対使えない、「トマト」「心」「じじい」に「ばばあ」に「父」と「母」が、使われているぅ〜〜!!!
…と思ったら、これを「レオ」と読むんですね。なるほど!こういうのは日本語として大いにありでしょう。決して恣意的な読み方であるとは言い切れません。
全体として、神話の世界のようです。星々の生い立ちを物語るかのような、壮大な主題が歌われています。感動的ですらあると思います。
ですから、入賞に!としたいのですが、細部をじっくり読んだときに「謎」がまだ多いかなと、思われました。
「燃える銀河へゆく獅子」が「朱の星降らせ」ながら「闇さまよい」という矛盾(?)、そして最後の行の、「小砂に虚ろ潜めて立ちぬ」ですね。「意味が通っている」という時に、「こじつけ」が本当にないか、そのへんを評価の基準とさせていただいておりますが、「ない」とは言い切れないのではないでしょうか。全体の主題、ムードは非常に感動的なのですが、文脈が通ったとは言いづらいものがありました。

次に、「あすほ」を拝見しましょう。
「兵(つわもの)」を主人公にした歌になっています。これは、細部の文脈がよく通っているように思われます。
が、「とわを」とは逆に、その主人公である「兵」の役割というか目的というか性格というか・・・、これはもしかすると奢れる人類を滅ぼしたい破壊の神様か何かでしょうか。
筆者自身も一時期、こういう作品がいっぱいできたことがあります。自分では「ノストラダムスの予言パングラム」(爆)と思っておりました。パングラミングをしていると、ほんとに不思議なことに、「天啓」を受けてしまうんですね。パングラミングはそもそも、自分の思い通りには言葉が並ばないものですから、余った仮名葉が勝手に決めてくれた苦しい単語が、自分の意志とは裏腹にどんどんつながって、世にも恐ろしい世界が出てくるものなのです。つまりそれは、「天啓」でもなんでもない、要するに「余った」ということでしょう。
Cypressさんのこの「あすほ」がそうだとはもちろん言えませんが、問題は作者の意図ですね、どっちの方向に持っていこうという意志で作ったのか、その意志が反映された結果になっているのか、そのへんがちょっと分かりづらいと思いました。




 愛媛県松山市 ことぶきさんの作品(2002年7月17日掲載)

 佳作



「いしの」

石の上に四年
文置き発つは怖くモラトリアム

焼かれる墓地を冷ませぬ指投げ
染めろ全て

いしのうえによねんふ
みおきたつはこわくも
らとりあむやかれるぼ
ちをさませぬゆびなげ
そめろすべて


 佳作


「ほしい」

欲しいもの



口笛

煙草

あてにする夢
予想せぬお金
浪漫
村を一つ
部屋


ほしいものわれなりく
ちぶえさけたばこあて
にするゆめよそうせぬ
おかねろまんむらをひ
とつへやきみ




【寸評】松山のことぶきさん、初めてのご投稿ですが、日を置かず二度に分けて二首お送り下さいました。
一首ずつ拝見しましょう。
「いしの」
「石の上に」三年ならぬ「四年」、次の行では「文置き発つ」「モラトリアム」とありますから、大学卒業も間近なのに、いまだ進路を決めかねている大学生のことであろうと想像できました。とてもきれいな詩文になっていますね。
後半の二行は、一気に抽象的、暗示的で、これも意味が深そうで興味深いところです。できあがった文の言わんとするところに読み手が引き込まれていく、そんな感じがします。
あとは、その後半の二行で、複数の読み手に、ある程度一致した理解が可能であれば、文句なしに賞を差し上げたいところでしたが、やはり少し「謎」が残ります。このへんが、作り手と、読み手とを対立させうるポイントとなってしまいます。
自由に解釈する、というのももちろんありですが、パングラムの場合、“パングラムらしさ”を色濃く残すものは完成度が高いとはなかなか評価を下せないのです。
でもでも、とても深さを感じさせてくれる作品でした。

「ほしい」
『夢・色・葉・歌』の中でも取り上げている、“作りやすい方法”で作られた作品、つまり、単語の羅列をメインにした作品ですね。
それでも、“パングラムらしさ”をまったく感じさせないものになっていれば高く評価したいということは、過去にも申し上げている通りです。ただし、評価はやや厳しくさせていただいております。
さあどうでしょうか。
まずこの作品、面白いのは、題名のようにして「欲しいもの」と始まるところですね。「さあ、何が欲しいんだろう?」と興味を持たされて読み進みます。
「我」…? ふうむ、「我」が欲しいとは、ふ、深い! いきなり意表を突かれて感心しきりです。
「形」…。 うむうむ。容姿に欲があるということかな? なるほど、なるほど。
この二つ、とても若者らしい(ことぶきさんは、若い女性のようです)、新鮮な感じがいいですね。
「口笛」…。「唇に歌を持て」というのを思い出しました。あんな感じでしょうか。
「酒」「タバコ」…、おやおや普通といいますか、若者らしからぬといいますか…。
「あてにする夢」…、保留とさせていただきます。
「予想せぬお金」…。確かに、それは誰でも欲しいですね!
「浪漫」…。はい、私もできることなら欲しいもんです!激しく同感!!
「村を一つ」…。欲張ったですね、これは、恐れ入りました。
「部屋」…、欲しいですね。でも、「村を一つ」あるいは「部屋」を一つということでしょうか。
「君」…、これは「浪漫」とかかってきてしっとりした締めくくりでいいですね!!
全体を通して、若い作者の悩み、迷い、甘えというものがなかなかうまく表現されていると思いますが、もう少しという印象がありました。どうしてかと考えますと、どうも、「夢」という語ではないでしょうか。「夢」が、作品の完成度を決定する上で、きわめて重要なところにあるようです。
それは、「欲しいもの」という主題とのコンフリクトにあるようです。「夢」が「欲しいもの」とぶつかってしまっている。そんなことを思いました。それと、「あてにする夢」というのもどうでしょう。「謎」になっているようです。
この「寸評」は、あくまでも筆者の独断ですから、あるいはことぶきさんのご本意にはそぐわないかもしれませんが、寄せられる作品の数々、パングラムにある十分な可能性というものに照らしての相対的な評価であるとお考え下さい。
つまり、もっといい作品が、きっとできそうですよ!ということです。
なにはともあれ、ご投稿作品、存分に楽しませていただきました。ありがとうございます。
どうぞこれからも是非、パングラミングを楽しんでみてください!




 岐阜県本巣郡穂積町 いもぶぶさんの作品(2002年4月25日掲載)

 佳作



「わしの」

「ワシのタテ笛を、チミも舐めろ」
おあいにく様、やれへん。
「ヒ」。
ほらね、婿が発狂。
「ぬ。取り消すぞ。許せ」

わしのたてぶえをちみ
もなめろおあいにくさ
まやへれんひほらねむ
こがはっきょうぬとり
けすぞゆるせ




【寸評】いもぶぶさんの初投稿をいただきました。
このような形式が「邪道でしょうか?」とのご質問もいただいておりますが、決してそんなことはないと思います。会話形式も大いにありだと思います。
作るのが比較的易しいのは、単語の羅列をした型式ですね。いもぶぶさんの「わしの」にも、名詞で止めたいわゆる“体言止め”が二カ所ありますね。「おあいにく様」と、「娘が発狂」。これが多いと比較的作るのが楽になるはずです。
同じように、“命令形”ですね。これも「えけせてねへめれ」が余りやすいということがあるので、“命令形”にして使ってしまうことで、比較的楽になります。私の経験でも、余るので苦し紛れに“命令形”にしてしまうということがよくありました。
いずれにしましても、楽をしたからだめだということでは決してありません。作品を味わってみて、言葉が整って無理なく繋がって、パングラムであることを感じさせないものになっていれば、レベルが高いと言えるのだと思います。
さて、「わしの」を拝読しまして、一言で言って、楽しいです。「タテ笛」に付着した唾液を想像してしまうところ。「チミ」という二人称代名詞、これは昔の赤塚不二夫あたりの漫画の登場人物を想像します。「婿が発狂」というのも唐突ですが、すっかり漫画の世界みたいで笑いを誘います。楽しませていただけて、いもぶぶさんには本当に感謝! あとはもう少しパングラムらしさ、苦しさですか、それがなければ入賞とさせていただけると思います。
本当にどうもありがとうございました。
また是非、新作を読ませてください。




 富山県西砺波郡福岡町 Cypressさんの作品(2002年3月4日掲載)

 佳作



「もゆや」

もゆや寝ろ
きみへ逢いたくて
花を摘む昼下がり
蝶炎舞し
消せぬ焔
眼に染まらす
児とわれ

もゆやねろきみへあい
たくてはなをつむひる
さかりちようえんふし
けせぬほのおめにそま
らすことわれ




【寸評】初めてご投稿いただきました富山県のCypressさんの作品です。
これが二作目だとのことで、二時間程度でできたそうです。
全体通して拝見しますと、わかりそうでわからない、パングラム独特の不思議な世界ですね。ただわからないのではなくて、どことなく幻想的で、「花を摘む」「昼下がり」「蝶」「消せぬ炎」など、それだけでも魅力的で想像力をかき立てる言葉が散りばめられています。
読んでいて楽しくなる、読めば読むほど“味”が出てくる、そんな作品になっていると思いました。
ただ、入賞にできなかったのは、パングラムらしさというのがちょっと色濃いかなというところですね。読めばすぐにパングラムだとわかってしまう。それと、「もゆ」でしょうか。これについては、「架空の人名」だということですが、その説明がなくても読んですぐに人名だとわかるようになっているともっと良かったと思います。
いずれにしましても、久しぶりにご投稿いただいて、存分に楽しませていただきました。
Cypressさん、どうもありがとうございました。
どうぞこれからも振るって作品をお寄せ下さいますよう。m(_ _)m




 清水市 内藤勝さんの作品(2001年6月15日掲載)

 佳作



「ふあみ」

ファミリー向けなら、
すそ野に決めだね。
お盆中でも広く使えるし、
小部屋をとれば彷徨わせぬ。

ふあみりいむけならす
そのにきめたねおほん
ちゆうてもひろくつか
えるしこへやをとれは
さまよわせぬ




【寸評】
ついに出ました!世界初か?広告パングラムだそうです。
まずどこの広告かというと、「富士すそ野ファミリーキャンプ場」だそうです。←リンクも貼っておきましたので、クリックしてください。
さてパングラムです。「ファミリー向けなら、すそ野に決めだね。お盆中でも広く使えるし、」ここまでは完璧に普通の話し言葉してますよね、見事です!しかし最後の行がやはり苦しいでしょうか。
でももしかすると、キャンプ場と聞いているから余計に評価が厳しくなってしまうのかもしれません。まず、「きゃんぷ」あるいは「きゃんぷじょう」が入っていませんね。次に「小部屋」と言っているけど、キャンプ場ならテントでしょう?…もしキャンプ場じゃないとすれば、裾野(静岡県裾野市)のどこかの旅館かホテルでしょうか。う〜ん、でもやっぱり「広く使える」と「小部屋を取れば」の文脈が謎〜。
でもとっても非常に大変面白い作品でした。内藤さんありがとうございました。m(_ _)m



 東京都 横溝さんの作品(2001年4月28日掲載)

 一等賞



「さくら」

桜待つ我 枝見上げ
冬に眠る命こそ良し
辺を花もて埋めろ
風 ひんやりと頬過ぎぬ

さくらまつわれえたみ
あけふゆにねむるいの
ちこそよしへをはなも
てうめろかせひんやり
とほおすきぬ


【寸評】JAVA scriptで作られた日本語パングラム自動作成ツールを公開してくださっている横溝さんの作品です。
メールでいただき一読して「やられた!」と思いました。入賞間違いないと思ったからです。
じっくり読ませていただいてもとにかくすばらしい、文句なしの一等賞です。おめでとうございました!
文脈が見事に通り、詩情あふれ、パングラムであることをあまり感じさせません。なによりも高い文学性を感じさせます。
「つぼみ」という題名をいただいておりますが、PPD掲載には46音のみで完結させることで公平を保ちたいため、頭の3枚を仮の題名ということにさせていただいております。ご了承下さい。
すばらしい作品をお寄せいただき本当にありがとうございました。どうぞ今後とも宜しくお願いいたします。




 東広島市 Jokerさんの作品(2001年4月3日掲載)

 参考作品



「あいし」

 愛してくれなきゃネコは 牢に独り 罪を責め
 吠えワン様たちから毛おヘソも盗む 冬の夜

 あいしてくれなきゃね
 こはろうにひとりつみ
 をせめほえわんさまた
 ちからけおへそもぬす
 むふゆのよる


 同じく、Jokerさんの作品(2001年4月3日掲載)

 参考作品



「ぬりえ」

 ぬりえのネコは ふるさとに
 ひもぐつおそろい 地球を結べ
 豆から下駄で
 やれ 幸せな本読み

 ぬりえのねこはふるさ
 とにひもぐつおそろい
 ちきゅうをむすべまめ
 からげたでやれしあわ
 せなほんよみ


 同じく、Jokerさんの作品(2001年4月3日掲載)

 佳作



「ひほう」

 秘宝庫をよく見ると分かりますね
 それは 野菜湯も雨に煙らせ得ぬ
 ヘンなお風呂の木槌でした

 ひほうこをよくみると
 わかりますねそれはや
 さいゆもあめにけむら
 せえぬへんなおふろの
 きづちでした




【寸評】
Jokerさん初投稿ありがとうございます。
「あいし」は「濁音なし」、「ぬりえ」は「なんとなく、楽しそうなお話を読んでいるらしい」、「ひほう」は「何が何でも敬体のものを作ってみよう」とのこと。
「濁音なし」とか「何が何でも敬体のものを」とか、目標を定めてのパングラミングをはじめからしているところに可能性を感じます、これはきっとそのうち一大傑作ができること、間違いなしでしょう。
とにかくいいのは、平易な言葉を選んでいるところだと思います。そうするには余裕が必要です。仮名葉を並べて行く際のJokerさんの気持ちに、迷いがないのだと思います。
三作とも共通して言えることだと思いますが、あと不足しているのは「文脈の整合性」でしょう。Jokerさんはきっと想像力のたくましい人ですから、自分の頭の中では文脈が整っていたりするのかもしれませんが、そこをもうちょっと疑って、文節ごと移動してみるなどして、並んだ言葉から新しい視点で発見があると、本当にわかりやすいものになるのではないでしょうか。
勝手なことを申し上げまして、どうもすみません(^^)。でももし何か参考にしていただければ幸いです。



  埼玉県所沢市 川原篷子(かわはらとまこ)さんの作品(2001年2月24日掲載)

 参考作品



「むかし」

 昔、烏骨鶏を見
 故にヒモより椀スられる
 時経て蓋
 その様はなお褪せぬめちゃ骨黒

 むかしうこっけいをみ
 ゆえにひもよりわんす
 られるときへてふたそ
 のさまはなおあせぬめ
 ちゃほねくろ


 同じく、川原篷子さんの作品(2001年2月24日掲載)

 佳作



「ふしす」

 富士裾野 小雪眠りに
 地へ埋まる
 今朝も見えぬかよ やれ花芽
 頬をつくとて
 洗わせろピイタン

 ふじすそのこゆきねむ
 りにちへうまるけさも
 みえぬかよやれはなめ
 ほおをつくとてあらわ
 せろぴいたん




【寸評】
「投稿作品」久々の更新となりました。こうして更新できるのも、ご投稿くださった川原篷子さんのおかげです。本当にありがとうございました。

「烏骨鶏」の「むかし」、「ピータン」の「ふしす」、両作品ともそれぞれ1時間ぐらいで完成されたということですね。

「むかし」から拝見。「烏骨鶏」ではじまり、「めちゃ骨黒」という関連語でしめる、これが文脈の柱になっているわけですが、う〜ん、謎ですね〜。想像力たくましく深く深く読んでゆけば、なるほど〜と、いきたいところなんですが、「なるほど」の「ど」まであと一歩というところでしょうか。でもこれがパングラムの醍醐味だったりします。楽しませていただきました。

続けて「ふしす」の作品。「富士裾野」、「小雪」、「地へ埋まる」・・・と、こちらの方はだいぶ文脈が通ってますね。謎が少ないということで、佳作とさせていただきました。
最後に出てくる「ピータン」が、小雪降る「富士裾野」の美しい光景と強烈なコントラストを成して、面白いと思います。「洗わせろ」の命令形も、いわばパングラムらしいところではありますが、あれをわざわざ洗わせて欲しいと思う人って・・・考えるとこれも楽しいです。

ご投稿いただいてからアップさせていただくまでに2週間以上もかかってしまい、すみませんでした。どうぞ、これからもPPDを宜しくお願いいたします。



 札幌市 瀧口虹さんの作品(2000年10月3日掲載)

 佳作



「しろも」

白木綿
揺れて戯けの
道やむらさき
悪とおぼえつ
過去へ酔う
魔は昼にぞ寝 居ぬふりを成せず


しろもめんゆれてたわ
けのみちやむらさきあ
くとおぼえつかこへよ
うまはひるにぞねいぬ
ふりをなせず


【寸評】PPDが始まってそろそろ4年、ここに記念すべき第一作!をご紹介できる運びとなりました。第一作?投稿作品ならもう数え切れないほど掲載されてる?…もちろんそうなんですが、この瀧口さんの作品は、封書で送っていただいたものなのです。凄いでしょう。こんなすごいこと、PPDに限らず、よそ様のいろんなウェブサイトでも、まずないことじゃないでしょうか。
 瀧口さんは、市の施設のパソコンで、PPDをご覧になってくれていたそうで、ご自身はパソコンをお持ちでないということです。PPDはつ、ついに、インターネットを超えたのですぅ!(涙)
 さて、大感激の瀧口虹(たきぐちこう)さんの作品を拝見しましょう。
 文脈、読み込んでみると通っているようです。詩情もあって、なかなかいい作品だと思いました。入賞にならなかったのは?う〜ん、やはり基本的な基準として、「パングラムであることを感じさせないこと」というのがありますが、今ひとつ、パングラムを感じさせてしまうかな?というところでしょうか。でもなかなか素敵な作品です。
 これからもどしどしと、ご投稿をお願い申し上げます。
 瀧口さんには、ページをプリントアウトして郵送したいと思います。パソコン持ってる皆さんは、持ってないふりしないでね。けっこう手間もかかるから。




 清水市 内藤勝さんの作品(2000年8月8日掲載)

 参考作品



「るてん」

流転へ光さそえ
親も妻ほめろ
地球の息子に後を託し
笑い見せぬ、夜舟無ければ

るてんへひかり
さそえおやもつ
まほめろちきゅ
うのむすこにあ
とをたくしわら
いみせぬよふね
なければ


 同じく、内藤勝さんの作品(2000年8月8日掲載)

 佳作



「わたし」

私お休み雨降るな
雪のち曇り空晴れて喜び
常にマントを上に向け干さぬせいか

わたしおやすみあめふ
るなゆきのちくもりそ
らはれてよろこびつね
にまんとをうえにむけ
ほさぬせいか


 同じく、内藤勝さんの作品(2000年8月8日掲載)

 佳作



「むろん」

無論、月夜を忘れ得ぬ
屋根へ旋風起こり
海に雨の降る暇無く
大地は裂けて
星と空燃ゆ

むろんつきよをわすれ
えぬやねへかぜおこり
うみにあめのふるひま
なくだいちはさけてほ
しとそらもゆ


 同じく、内藤勝さんの作品(2000年8月8日掲載)

 一等賞



「はるや」

春、屋根に風、陽を求む
夏、海の家われ待ちぬ
秋、澄んだ星空へ
冬、氷避けてよろめく

はるやねにかぜひをも
とむなつうみのいえわ
れまちぬあきすんだほ
しぞらへふゆこおりさ
けてよろめく


 同じく、内藤勝さんの作品(2000年8月8日掲載)

 佳作



「まくろ」

鮪・うに
鯛・海老・穴子
鰹・鰤
寿司の夢見て
夜も眠れぬ
おせちへ焼きそば
仏さわらん

まぐろうにたいえびあ
なごかつをぶりすしの
ゆめみてよるもねむれ
ぬおせちへやきそばほ
とけさわらん




【寸評】
 内藤さんからまたたくさんご投稿いただきました。
 はじめの「るてん」は、これも前回同様、執念を感じる隠し言葉入りの作品です。今度は「ないとうまさる」を逆にいったわけですね。
 次の「わたし」は、一行目の軽やかさがとてもいいですね。
 その次の「むろん」は、ご自身もおっしゃる通り、「ノストラダムスの大予言風」になってきましたが、「月夜」「旋風」「海」「雨」「大地」「星」「空」という自然の表象をとてもうまく繋いでいます。これはもうちょっとで入賞か…と思ったら、
 次の「はるや」が見事でした! パングラム全体を四つの句に分け、それぞれを「春」「夏」「秋」「冬」ではじめるやり方というのは、すでにいくつか目にしてきた手法ですが、内藤さんのこの「はるや」は、文脈的にも叙情的にも質の高さを感じます。「一等賞」の条件として、「文脈の整合性」と「パングラムをまったく感じさせないこと」を念頭に置いておりますが、この作品では、おそらく、パングラムであることを即座に見破れる人はほとんどいないでしょう。
 すばらしい作品の完成、おめでとうございました。そしてご投稿、ありがとうございました。
 最後の「まくろ」は、「ヨコハマたそがれパングラム」とも呼ぶべきもので、単語の羅列による構成になっています。こういう作品が悪いということは決してありません。が、こういう作品は完成にもっていくのが比較的簡単です。それで評価は厳しくするということを以前にも申し上げました。それでもパングラムをまったく感じさせないものには入賞もありえますので、どうか「じゃあ、もうやらない」なんておっしゃらないでください。



 清水市 内藤勝さんの作品(2000年6月17日掲載)

 参考作品



「なみこ」

波越えて
行く船の帆
遠き夢
裏ばかりやも
負けぬ汗を櫓に
寒し宵忘れ
ルソンへ発ちつ

なみこえていくふねの
ほとおきゆめうらばか
りやもまけぬあせをろ
にさむしよひわすれる
そんへたちつ


 同じく、内藤勝さんの作品(2000年6月17日掲載)

 佳作



「なみた」

涙を拭かぬ娘は
いつも
通せんぼ
嘘の比喩
まぁ嫌われてちゃ
叫べねえ
ルリ子によろしく

なみだをふかぬむすめ
はいつもとおせんぼう
そのひゆまあきらわれ
てちゃさけべねえるり
こによろしく

 同じく、内藤勝さんの作品(2000年6月17日掲載)

 参考作品



「なやみ」

悩みを聞けよ
いつでもあの娘
永久に二人は
嘘か本音
迫られぬ日
エロ搾取に
墜ちる娘

なやみをきけよ
いつてもあのこ
とわにふたりは
うそかほんねせ
まられぬひえろ
さくしゆにおち
るむすめ


 同じく、内藤勝さんの作品(2000年6月17日掲載)

 参考作品



「なせか」

なぜか飛騨市追分村、雨。
ところによって薄曇り。
晴れ間後根雪へ
さぞや見えぬ古本を


なぜかひだしお
いわけむらあめ
ところによって
うすぐもりはれ
まのちねゆきへ
さぞやみえぬふ
るほんを


【寸評】清水市の内藤さんがいきなり4首初投稿でやってくれました。(万歳三唱)
 まず、「なみこ」と「なみた」の歌は、漢字仮名混じり文の方を見ていただいた通り、各行の頭が「な・い・と・う・ま・さ・る」になっています。つまり「折り込みパングラム」になっているわけですね。
 続く「なやみ」と「なせか」の歌は、全仮名表記で7文字改行にしたときに、各行の頭がまたしても「な・い・と・う・ま・さ・る」になっています。こちらの方は、「隠し言葉」と呼んでいます。
 「折り込み」は、頭の音から句が始まるもの、「隠し」は句の頭ではなく仮名文の一定の文字数ごとに言葉を折り込んだものです。いずれにしてもご自身のお名前をしっかりと折り込まれ、執念なのか、はまりすぎたのか、凄いものを感じました。まったくすばらしいと思います。
 さて、一首ずつ。
 「なみこ」は、「寒し宵」というところが文法的に苦しいかと思います。「寒し。」で句点を入れると折り込みとしては頭に「よ」が来てしまう。「隠し」よりも「折り込み」の方が比較的易しいかと思っておりましたが、やはり難しいものなんですね。
 次の「なみた」は、「折り込み」であることを忘れてしまった方がむしろすっきりと、文脈も通って良い作品になるのではないでしょうか。というのは、漢字仮名混じりでの改行があくまでも「折り込み」のためだけになっていてちょっと無理を感じるからです。だからむしろ自然な改行による表記にした方が作品の質が上がると思われるのですがいかがでしょうか。文脈上、「嘘の比喩」のところが「謎」になっていると思われます。このへんが解決していたら入賞レベル、つまりパングラムであることを感じさせない作品になったと思います。
 次は「隠し言葉」の入った「なやみ」ですが、「な・い・と・う・ま・さ・る」を確かに隠した、というところにとどまっているように思いました。文脈等、う〜んと苦しいようです。
 最後の「なせか」は、「全部を地名と天候でまとめたかったのですが難しかったです。」ということで、「隠し言葉」に飽きたらず更に困難な制約を自ら課しておられます。そこまでやるなら文脈的な完成度を優先させた方がいいのではないかと、筆者個人的にはそんなことも思いましたが、このようにパズル性を思いっきり楽しむというのもパングラムの楽しみ方の一つだと思います。とにかく夢中になって楽しんでいる様子が感じられて、それはとてもすごいことなんだなと、今回内藤さんには教えられることが多かったです。
 自分専用の便箋を特注で作ったとして、「折り込み」は欄外に名前を刷り込んだもので、「隠し」は名前を透かしにしたもの…、「な・い・と・う・ま・さ・る」という刷り込みを読ませていただいて、そんなことを思いました。



 大津市 爛石(らんせき)さんの作品(2000年6月17日掲載)

 参考作品



「はたち」

二十歳の日、襟裳岬へ。
集わんや、黒鬼め。
来ぬ明日を呼ぶぜ、唸るぞ。
今眠れ、灯影揺らして。

はたちのひえりもみさ
きへつどわんやくろお
にめこぬあすをよぶぜ
うなるぞいまねむれほ
かげゆらして


【寸評】爛石さん三度目のご投稿ありがとうございます。爛石さんもこの「はたち」では、漢字仮名混じり文の各行頭に「は・つ・こ・い」を折り込んできてくれました。
 たまたま今回は清水市の内藤さんが怒濤の「折り込み」と「隠し言葉」で大迫力だったのでタイミングが悪かったかも?いえいえ、そういう否定的なことは言わないことにして、「はたち」を読ませていただきましょう。
 「黒鬼」というのが怖いですね。なんだろう?どんな顔してるんだろう?と思ってしまいました。こういうあらぬ方角から予測不能なキャラクターがいきなり登場するのもパングラムの痛快さですね。「はつこい」を「無理に持ってきたら、じつに不自由でした。」というご自身の弁。全体的な文脈はちょっと苦しくなっているように見受けられましたが、細部がなかなか面白いですね。



 大津市 爛石(らんせき)さんの作品(2000年4月19日掲載)

 佳作



「はやい」

早、遺骨。
君が褥に夢のせて、寄り添う炎。
ロマンスへ朝立ちぬ日、
オルフェも我を嘆く。

はやいこつきみがしと
ねにゆめのせてよりそ
うほむらろまんすへあ
さたちぬひおるふぇも
われをなげく


【寸評】爛石さん二度目のご投稿です。
しっかりまとめてきていて、とにかくうまいと思います。よく読むと、詩情も溢れています。もし「現代詩」と言われれば、本当にそんな感じ。「入賞」とすべき、なのかもしれません。ただやはり、パングラムであること、まだどうしてもそれが感じられてしまう…なぜだあああ?!…ということで考えられるのは…。
 「パングラムらしいもの」としてよくありがちなものに、「ノストラダムスの予言詩風」というのがあります。(筆者の作例にも多い)これは文脈の飛躍が独特の演出作用をおこしてちょっとなんだか暗い方向へ向かい、不気味な悪魔的雰囲気になったものです。こういうのはやはり「文脈の飛躍」が最大の原因だと思われます。つまり「わかりやすい文脈」とは言えなくて、読む側に「文脈の整合性を読みとってくれ〜!」と、ちょっと無理を要求することになるのです。
 ただ、「現代詩」にもそういうことってありがちなんですよね。だからもしかすると、これはこれでいいのかもしれません。



 大津市 爛石(らんせき)さんの作品(2000年4月1日掲載)

 佳作



「つきや」

月、山の端に、星たちと夢を追う。
瑠璃も色褪せて、草笛かよわず。
これら変化、汝胸顰みぬ。

つきやまのはにほした
ちとゆめをおうるりも
いろあせてくさぶえか
よわずこれらへんげな
むねひそみぬ


【寸評】滋賀県大津市から爛石さん初めてのご投稿です。
初めの一行、すばらしいと思いました。酔いますね。
パングラムの常として、「いろんなことを浅く語りがちになる」ということがよくあります。いろんな要素が全体を構成するのに効果的に共鳴し合って出てきてくれたら、それはきっと「文学」的にまとまるのでしょうが、その辺りがきっと「仮名葉(かなは=仮名のカード)の都合」と「運」なのだと思います。
もっと良くなる確率を高くするには、いろんなことよりなるべく一つのこと、あるいは少しのことに絞った方がいいのかもしれない…。そんなことを思いました。



 盛岡市 さつきさんの作品(2000年1月11日掲載)

 佳作



「ふゆを」

冬を見つめる旅路
遠く果て無き明日
幌が焼け 声の彷徨う空
地平線に我も眠りぬ

ふゆをみつめるたびじ
とおくはてなきあすほ
ろがやけこえのさまよ
うそらちへいせんにわ
れもねむりぬ


 同じく、さつきさんの作品(2000年1月11日掲載)

 佳作



「おもく」

重く永久に雪の降る
滅びては闇夜を寝かしつけ
無知な嘘さえ
あらぬ目線へ吸い込まれたり

おもくとわにゆきのふ
るほろびてはやみよを
ねかしつけむちなうそ
さえあらぬめせんへす
いこまれたり

【寸評】さつきさんまたナイスな作品のご投稿ありがとうございました。2首のうち、個人的には「ふゆを」が好きです。ただ「幌が焼け」の部分が「謎(なぞ:パングラムで異分子混入と感じられる部分、文脈上、無理や唐突さを感じる部分)」と言えば謎でしょうか。「やぼ」と「かけろ」に割り直すこともできますが、こういうことは作者におまかせするしかありません。
 岩手の方は雪が積もっているのでしょうか。「おもく」の作品には「重く永久に雪の降る」とあります。PPDの静岡では積もることはまずなくて、雪はむしろ憧れの対象ですが、豪雪地帯のみなさんの逞しさにはいつも頭が下がります。「おもく」のこの1行は、これはかなりの迫力だと思いました。
 さて、伝言コーナーです。
 さつきさんの写真展があります。

 2000年1月29・30日(土・日)
 会場:岩手県盛岡市上田公民館

 写真展ではパングラムの作品展示も行われるそうです。どうか皆さんお誘い合わせの上、是非見に行きましょう。筆者おきつ@PPDも行きたいですが、経済的に苦しいかも…。




 盛岡市 さつきさんの作品(1999年11月29日掲載)

 佳作



 「ほおへ」

 頬へ染み込む朝
 ぬれた手すりの色眺めん
 蜘蛛は陽と空ゆわえつけ
 今日を屋根に待ち伏せる

 ほおへしみこむあさぬ
 れたてすりのいろなか
 めんくもはひとそらゆ
 わえつけきようをやね
 にまちふせる

 同じく、さつきさんの作品(1999年11月29日掲載)

 佳作



 「めつむ」

 目つむり
 絵本と背中で触れた海
 潮騒は広き空へ抜け
 泡の音も鼓膜を揺する
 八千代に

 めつむりえほんとせな
 かでふれたうみしおさ
 いはひろきそらへぬけ
 あわのねもこまくをゆ
 するやちよに

【寸評】さつきさんがまた2首送って下さいました。(掲載2ヶ月も遅れてすみませんでした!)「ほおへ」の歌、ファンタジックなポエムしていて、いいなあと思います。さつきさんの作品のいいところは、仮名葉にまかせっきりのところがなく、ちゃんと作者がいるという、作者の存在感がかなりしっかりしている感じがするところだと思います。
 「めつむ」の方は、「を」を「鼓膜を」から取って「目をつむり」に持ってきた方がいいんじゃないかと、勝手に思っておりますがいかがでしょうか。




 広島県三次市 せいたかさんの作品(1999年11月29日掲載)

 佳作



 「のべつ」

 のべつ幕無し立ち向かう 我を殺すひんやりと
 蒼き夢得ぬ伏せて行け 骨身に然も春夜空

 のべつまくなしたちむ
 かうわれをころすひん
 やりとあおきゆめえぬ
 ふせていけほねみにさ
 もはるよぞら

【寸評】初めてご投稿のせいたかさんの作品。七五七五…の「今様歌(いまよううた)」に挑戦してくれました。古典「いろはにほへと…」は、「ん」の欠けた47字のため、「わがよたれぞ」のところが1字足りなくなっていますが、「ん」を入れた歴史的仮名遣ひ(旧仮名)ですと、これがぴったり七五七五七五七五になります。
 さて、現代仮名遣いではどうでしょう。全部で46字ですから、もちろん足りなくなるわけですね。それで「わがよたれぞ」のように足りない部分が2ヶ所になってしまいます。つらいところですが、せいたかさん、ナイストライだと思います。



 広島県双三郡吉舎町 seiさんの作品(1999年11月29日掲載)

 二等賞



 「もちに」

 餅に粥 鍋焼きうどん そば食って
 冷えた酒を呑み干し
 眠れぬ夜、ふらり眩暈おこす。
 逢わせろ!

 もちにかゆなへやきう
 とんそはくつてひえた
 さけをのみほしねむれ
 ぬよるふらりめまいお
 こすあわせろ

【寸評】seiさんも初めてのご投稿です。文脈が見事通りました。「逢えない思い」でやけ食い、やけ酒…という心理描写まで入っています。ここまでまとまってくると、パングラムって本当に面白いんですよね。単語の羅列部分がなければ※一等賞間違いなしの作品だと思います。

※単語の羅列部分が入ると、パングラミングがだいぶ楽になるので、「横浜、黄昏、ホテルの小部屋…」のようなものについては、評価をちょっと厳しくさせていただいております。詳しくは、『夢・色・葉・歌』をお読み下さい。



 広島県双三郡吉舎町 岡田万美さんの作品(1999年11月29日掲載)

 佳作



 「せいき」

 世紀末だ。わぁ、寝込むなよ。
 目で見、星をひろえ。
 うちらの故郷は、
 カニやリスも奥へ行けぬソ連。

 せいきまつたわあねこ
 むなよめてみほしをひ
 ろえうちらのふるさと
 はかにやりすもおくへ
 ゆけぬそれん

【寸評】seiさんと一緒に送ってくださいました、岡田万美さんの初投稿作品です。万美さんは、なんと10歳!、小学校4年生だということです。PPD投稿者の最年少記録樹立となります。万美さんパングラム完成おめでとう!!!これからも作品お待ちしています。




 盛岡市 さつきさんの作品(1999年9月2日掲載)

 一等賞



 「せんふ」

 扇風機眠りかけ
 壊れた柵を揺らすその日
 星は網戸によろめいて
 燃えやまぬ夏へ落ちる

 せんふうきねむりかけ
 こわれたさくをゆらす
 そのひほしはあみとに
 よろめいてもえやまぬ
 なつへおちる

 同じく、さつきさんの作品(1999年9月2日掲載)

 佳作



 「しすま」

 沈まぬ日歌い
 胸で火影踊り 血は沸く
 声燃やせ 波ら揺さぶれ
 月の路面に夜を遊べ

 しすまぬひうたいむね
 てほかけおとりちはわ
 くこえもやせなみらゆ
 さふれつきのろめんに
 よるをあそへ

【寸評】「せんふ」の歌、お見事でした。文脈、完璧です。詩情、溢れています、溢れています。パングラムであること、ちっとも感じさせません。すばらしい作品をお送りいただいたこと、本当に感謝しております。
 「しすま」の方が、「せんふ」と決定的に違うのは、やはりこれはパングラムだなあと、一目でわかるところでしょうか。さつきさんが、もし作られたすべての作品をPPDにお送り下さっているとすれば、第2作ぐらいで一等賞、これはまさしく「おそるべし」です。
 ほめちぎりましたが、どうかこれでおしまいにならないよう、またお送り下さいますよう、お待ちしております。「仮名葉の完璧な並べ方」が、これで見つかったわけではないのです。

PPD主宰 興津諦の本(アドマック出版)

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